調査研究の成果
2024年度 調査研究の成果
- ※「敬称略」にて掲載しています。
- ※「所属機関」「役職名」については、原則として当財団への調査研究実施報告当時のものを掲載しています。
郭 芳(カク ホウ)
同志社大学社会学部 准教授

【調査研究テーマ】 「無子高齢者の生活実態と支援ニーズの解明に関する基礎的調査」
共同研究者
金 圓景 明治学院大学社会学部准教授
鄭 煕聖 関東学院大学社会学部准教授
鈴木 太一 京都市原谷地域包括支援センターセンター長(申請時)
| 調査研究実施報告書 | |
|---|---|
| 調査研究の成果(サマリー) | 本調査研究では、無子高齢者20名へのライフヒストリーに基づくインタビュー分析を通じて、生活実態と支援ニーズの構造が明らかにされた。対象者の多くは配偶者や子どもとの安定した関係を欠き、実質的な支援資源に乏しい中で生活していた。その結果、身体機能の低下、経済的不安、緊急時対応の不確実性、相談相手の不在、身元保証人問題など、従来家族が担ってきた機能の空白に直面していることが確認された。さらに、支援を求めることへの遠慮や将来不安、死後への不安など心理的側面も重層的に存在し、これらが相互に作用することで、生活全体の不確実性が形成されていることが示された。したがって、無子高齢者支援は、個別のニーズへの対応ではなく、生活全体を包摂的に支える制度設計へと転換される必要がある。 |
| 調査研究成果の発表 (雑誌掲載、学会発表等) |
【学会発表】 「無子高齢者の生活実態と支援ニーズの解明―20名へのインタビュー調査を通じて」 (老年社会科学会第68回大会 2026年6月13-14日) |
| 代表者よりひと言 | 本研究を通じて、無子高齢者が直面する課題は個別の問題ではなく、家族を前提とした社会制度の限界を映し出す構造的課題であることを実感しました。当事者の語りに丁寧に向き合う中で、生活の不確実性と孤立の実態が浮き彫りになりました。今後は、家族に依存しない支援のあり方を具体化し、誰もが安心して老いを迎えられる社会の実現に貢献していきたいと考えています。 |
〔掲載日:2026年6月5日〕
萬屋 京典(ヨロズヤ キョウスケ)
星城大学 リハビリテーション学部 講師 作業療法士
【調査研究テーマ】 「認知症高齢者の行動心理症状に対する家族介護者の援助要請、認知症スティグマの関連性」
共同研究者
齊藤 千晶 認知症介護研究・研修大府センター 主任研究主幹
藤井 啓介 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部 准教授
吹田 晋 星城大学リハビリテーション学部 研究員
伊藤 篤史 共和病院 在宅介護事業部
長安 大樹 グッドタイムクラブ・グランド萩 理学療法士
後呂 智成 紀和病院リハビリテーション部 作業療法士
中島 大貴 奈良学園大学 保健医療学部 講師
大中 卓哉 介護老人保健施設 あすらや荘 理学療法士
沓名 一朗 星城大学 リハビリテーション学部 助教
花岡 秀明 広島大学大学院医系科学研究科 教授
| 調査研究実施報告書 | |
|---|---|
| 調査研究の成果(サマリー) | 本研究では、認知症の人の家族介護者の援助要請行動と認知症の行動心理症状(BPSD)との関連性を明らかにすることを目的とした。研究参加者は、デイケアまたはデイサービスを利用している認知症の人とその家族介護者からなる43組(86名)であった。介護者の平均年齢は66.8±13.2歳、女性は34名(79.1%)であった。認知症の人の平均年齢は85.1±7.5歳、女性は28名(65.1%)であった。家族介護者と認知症の人の年齢および性別を共変量、家族介護者の過去1年以内の援助要請行動(生起の有無)、家族介護者の日本版認知症スティグマ評価尺度短縮版得点を説明変数、阿部式BPSD尺度の得点を目的変数として、二項ロジスティック回帰分析をベイズ統計により実施した。 結果では、家族介護者の援助要請行動はBPSDと関連していた(オッズ比2.03、95%ベイズ信頼区間[1.56、 2.66])。家族介護者の援助要請行動は、BPSDの悪化傾向に関連していると考えられた。今後の研究では、認知症患者の家族介護者における援助要請行動の質的側面を評価し、改善するための尺度を開発する必要があると思われた。 |
| 調査研究成果の発表 (雑誌掲載、学会発表等) |
【学会発表】 『認知症高齢者のBPSDに対する家族介護者の援助要請行動および認知症スティグマの関連』 (第14回日本認知症予防学会学術集会(日本認知症予防学会) 2025年9月12日) 『浦上賞受賞』 【学術論文】 『認知症の人の家族介護者の援助要請行動と認知症の行動・心理症状:横断研究(PDF:472KB)』 (Ageing Internationalに投稿済。現在査読中。) |
| 代表者よりひと言 | 本研究結果から、家族介護者の援助要請行動は、認知症の人のBPSDの悪化傾向に関連していることが示唆されました。このことは、ケアの困難さに直面したとき単に援助要請行動を起こしただけでは、家族介護者は適切な援助にたどり着いていない可能性を示唆していると思われます。今後は、援助要請をより適切に行えるかどうかが重要であると考えており、その能力を確認するための尺度や高めるための介入の開発に取り組んでいきたいと思います。 |
〔掲載日:2026年6月5日〕
稲村 泰成(イナムラ タイセイ)
亀田総合病院 理学療法士 、畿央大学大学院 健康科学研究科

【調査研究テーマ】 「地域在住高齢者におけるImagined Timed Up and Go testの信頼性の検討」
共同研究者
宇田和晃 国立長寿医療研究センター 老年社会科学研究部
小林好信 千葉医療福祉専門学校 理学療法学科
川畑琳太郎 亀田総合病院 理学療法士
| 調査研究実施報告書 | |
|---|---|
| 調査研究の成果(サマリー) | 【背景・目的】 近年、高齢者の転倒の一部は自身の身体機能を過大評価することが原因であると示唆されている。この誤認識は推定誤差として定義され、身体機能評価の結果と対象者主観の推定値の差で定量化される。推定誤差評価は、身体機能に認知機能も含めた転倒予測スクリーニングツールとして有用な可能性があるが、評価の信頼性は検証されていない。本研究の目的は、地域在住高齢者を対象とした推定誤差評価の検者間信頼性と検者内信頼性を検証することである。 【方法】 地域在住高齢者98名を対象にTimed Up and Go Test (TUGT)と、TUGTの推定値を評価するImagined Timed Up and Go Test (ITUGT)を用いて推定誤差を定量化した。2名の検査者が独立して測定した検査結果より、信頼性を検証した。 【結果・考察】 検者内信頼性および検者間信頼性は良好であり、臨床で使用可能である。 |
| 調査研究成果の発表 (雑誌掲載、学会発表等) |
【学会発表】 『地域在住高齢者におけるImagined Timed Up and Go testの信頼性の検討』 (第11回日本地域理学療法学会学術大会(一般社団法人 日本地域理学療法学会) 2024年11月16日-17日) |
| 代表者よりひと言 | この度は、貴財団の調査研究助成を賜り、心より御礼申し上げます。実績の乏しい若手研究者による研究にもかかわらずご採択いただいたことは、大きな励みとなりました。本助成により、これまで実施が困難であった調査研究を円滑に遂行することができ、研究目的を達成するに至りました。現在、研究成果は論文として国際誌へ投稿中であり、社会への還元に向けて発信を進めております。今後も本分野の発展に貢献できるよう努めて参ります。 |
〔掲載日:2026年6月5日〕
小野塚 雄一(オノヅカ ユウイチ)
国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 博士課程 大学院生

【調査研究テーマ】 「介護支援専門員のアセスメントにみる、短下肢装具不具合の把握と課題」
共同研究者
東畠弘子 国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 教授
| 調査研究実施報告書 | |
|---|---|
| 調査研究の成果(サマリー) | 短下肢装具(AFO)は歩行能力向上や転倒予防に重要であるが、生活期における不具合・不適合への継続的支援は十分でない。在宅AFO使用者に関わる介護支援専門員の役割は重要であるが、実態は不明である。本研究の目的は、介護支援専門員による装具の使用状況の把握と、不具合・不適合の発見状況を明らかにすることである。東京都の居宅介護支援事業所の介護支援専門員2,919名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。有効回答のうちAFO担当経験のある583名を分析した。その結果、装具の使用状況は確認されていた一方、不具合・不適合の確認は低かった。「装具の研修受講経験」は6.7%、「医療機関からの装具の情報提供」は31.4%にとどまり、情報共有の不足が示された。今後はICTを活用した情報管理・共有体制の整備が求められると考えられる。 |
| 調査研究成果の発表 (雑誌掲載、学会発表等) |
※2026年度学会発表予定 |
| 代表者よりひと言 | 本研究は、介護支援専門員が在宅のAFO使用者の装具使用状況を把握し、不具合や不適合を発見するための支援の可能性を検討する基礎資料として期待されるものであり、本助成により当初の目的を達成し有意義な成果を得ました。ここに深く感謝申し上げますとともに、今後も研鑽を重ねてまいります。 |
〔掲載日:2026年6月5日〕